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2015年 12月 23日
「ケセン語」という奇跡(5-4)
(ケセン語伝え人養成講座の開催に向けて) 「天国」も追放 山浦先生は「愛」をイエスの思いを誤って伝える言葉としてケセン語訳聖書から追放しましたが、「天国」という言葉もまた追放しています。「天国」という言葉からは、雲の上のどこか、死後の魂の世界のような特定の場所を考えてしまいます。しかし、これではイエスの思いを伝えることにはならないのです。 「便り」の中でイエスははっきりとこう語っています。 「神の国は見える形ではこない。ここにある、あそこにあるというものでもない。それはお前さんたちの間にあるのだ。」 つまり、神の国は実体のあるものではなく、人の心の中にある、人と人との交わりの中にあるというのです。 「天国」と訳されているギリシャ語聖書の言葉は「ヘー・バシレイア・トーン・ウーラノーン」。「バシレイア」が支配、王国、「ウーラノーン」は神、天の意味で、直訳すれば「神(天)の支配(王国)」となります。そこから「天国」という訳語が使われているわけですが、しかしそれではどこか別世界のことになって、「それはお前たちの間にある」というイエスの言葉と矛盾することになります。 神様のお取り仕切り そこで山浦先生は、人の心や、人と人との交わりの中にある神のはからいという意味をこめて「神様のお取り仕切り」と訳されています。それは、イエスの思いをこのように受け止めているからです。 「人間の不幸はどこから来るか。人が人に支配されることからくる。金持ちは貧乏人をますます搾り取り、主人は奴隷をこき使う。力ある者は弱い者をしいたげて、その上にあぐらをかき、しいたげられた者の声に耳を貸そうともしない。人間と人間との交わりはそこで決定的に破壊され、怒りと絶望と不安とが人々を縛り上げている。しいたげる者は、いつ自分がしいたげられる立場になるかと怯え、反逆の可能性を芽のうちから摘み取ろうと血眼になり、しいたげられたものは復讐の機会を狙う。人の世は常に支配する者と支配される者との相克である。だが、それはもうおしまいだと、イエスは言う。神さまが人をお創りになったのは、そんな悲惨な状態に人間をおくためではなかった。さあ、気持ちを切り替えようではないか。これからは神さまが直接お前たちを取り仕切ってくださるのだ。神様のお取り仕切りに身をゆだねよう。人間の救いはそこにある。」(『ふるさとのイエス』) (写真:『ふるさとのイエス・ケセン語訳聖書から見えてきたもの』 イー・ピックス) イエスの覚悟 しかし、このようなイエスの思いも、当時の社会を支配する者や既得権益をむさぼる者たちにとっては不都合な事実でしかなかったのです。 イエスは、生きとし生けるものすべてが活き活きと暮らしてこそ「神様のお取り仕切り」にかなうものであると説いています。そして、それは心を切りかえさえすれば、すぐにでも実現するのだと。 その実現のためにイエスは、社会を支配する旧弊な制度や慣習、また偏狭な信仰や観念が「神様のお取り仕切り」の大きな障害となって立ちはだかっていることを巧みな喩えを用いて人々に示しています。 特に、自らの権威や権益にしがみつき、人々を誤った道へと導くユダヤ教ファリサイ派の学者たちを「立派ぶりの嘘語り」と切り捨て、激しく糾弾しています。「やばっつい(不潔な)腐れかばね(体)」だけではありません。峻烈をきわめる皮肉な喩えをこれでもか浴びせています。 しかし、当然のことながら、そのような言動がどんな結果を招くことになるか。イエスは、自らが当時の支配層にとって不都合な存在であることを、そしてそれゆえに十字架上の死として受け入れざるをえないことを覚悟していたのです。 この世の仕上げ 聖書には「世の終わり」のことがくり返し記されています。しかし、イエスが人間の本来あるべき姿を説いていながら、その一方で「世の終わり」などと世界の消滅を予告するというのはまったく筋が通りません、 「世の終わり」と訳されているギリシャ語は「スュンテレイア・トゥー・アイオーノス」。「アイオーノス」は「時代、永遠、世界」で、「スュンテレイア」は「完成」を意味します。なんのことはない、もともとの意味が「この世の完成、仕上げ」であって「終わり」などではなかったのです。 イエスは、神様のお取り仕切りは人と人との関係にあると教えています。 「その関係を完成させるとき、神さまのお取り仕切りはわれわれの間に「実現」する。自分よりもかわいいものはないとはよくいうことばだが、その自分とまったく同じに相手の人を「大事にしろ」というのである。よしそれが「憎い敵であっても、大事にしろ」というのである。そこに「神様のお取り仕切り」が実現し、完成する。すべてはこのためにある。」(『ふるさとのイエス』) (『三陸新報』2010.09)
by sophia_forest
| 2015-12-23 18:51
| ケセン
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