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2006年 04月 16日
仙台の戦災復興記念館で、水口憲哉東京海洋大学名誉教授の講演会「どうなる?豊かな三陸・宮城の海」が行なわれた。講演の内容については主催された「みやぎ脱原発・風の会」のブログをご覧いただきたい。
驚いたことに、この講演会に日本原燃の宮川俊晴・安全技術室放射線管理部長が参加していたのだ。 ひときわ大柄な人物が会場に現われ、誰とも挨拶をかわさず、落ち着かない様子で席に着いて周りを見ている。 どこかで見た顔だなと思ったものの、それ以上は気にとめずにいたのだが、講演後の質疑応答で最後に質問に立ち、再処理を推進する側の者で宮川と名乗ったことで、宮古での原燃説明会で壇上にいた人物であることにようやく気づいた。 司会は宮川さんの質問で閉会にするつもりでいたのだが、こんな機会はめったにあるものではない、スタッフに告げて閉会を延長してもらい、原燃幹部との思わぬ討論会が実現した。 とはいえ、会場の都合もあり、宮古の説明会の鬱憤を晴らす絶好のチャンスが短い時間で終了。結局、彼らの主張が何に依拠しているのかを明らかにできたのは二点だけだった。 宮川さんの他にも、電事連の関係者も来ていたのだが、申し合わせて来ていたわけではなく、偶然その場に居合わせた、ようだ。(真偽は知らない。) 宮川さんによると、仙台を訪れたのは、プライベートで友人に会うためとのこと。偶然この日、「青森や六ヶ所の人たちが迷惑している作り話しを岩手で吹聴している人物」が仙台でも講演するというので、どんな人物がどういう話しをしているかを覗きにきたという。 水口先生に対する宮川さんの質問はトリチウムについてだ。水口先生がトリチウムについての科学的な知識をどれだけもっているか、その無知や誤りを突くことで、自分たちの主張の正しさを訴えたかったようである。 電事連の関係者も、宮川さんの前に同じ質問をしたのだが、こういう場面での質問に慣れていないのか、次第に支離滅裂な状態になり、果ては、皆さんだってタバコや排気ガスを出して迷惑をかけているなどと放射能と排気ガスを一緒にする始末。ブーイングを受けて、あえなく自滅してしまった。 宮川さん、質問に立つつもりはなかったようだが、電事連関係者の質問があまりに不甲斐ないと思ったのか、見かねて登場とあいなったようである。 水口先生に聞かれて、原燃の社員であることを明かしたものの、部長の要職にあることを知っている人間がいたことは誤算だったかもしれない。 ということで、宮川さんの出現で明らかになった再処理推進派の主張とその論拠二点について報告しておこう。 一つはトリチウム。再処理推進派は、このトリチウムを、水と同じように、いくら大量に放出しようと無害な物質にしておきたいようだ。 その論拠になっているのが、滝澤行雄氏の「六ヶ所再処理工場から放出される放射性物質の環境への影響」という論文である。コピーを宮川部長から講演後に手渡された。 滝澤行雄氏は、このコピーによると、秋田大学名誉教授、元国立水俣病総合研究センター所長となっている。聞くところによると水俣市の助役も勤めたようだ。 どういう人物なのかネットを調べてもよくわからないので、水俣市役所に詳しい知人に調べてもらっている。(→巻末) この論文は『資源環境対策』今月号(4月号)に掲載されているので興味のある方はご覧いただきたい。同誌の目次だけは出版元の環境コミュニケーションズのHPにある。 この滝澤論文によると、トリチウムは、 ①水素の同位体で、放射線を出すこと以外は普通の水素と科学的性状は同じであるため、環境で蓄積性は高いものではない。体内摂取した際の生物学的半減期は水の状態で10日、有機化合物で40日である。 ②きわめて弱いベータ線のみを出す放射性物質であることから、1Bq当たりの実効線量は他の放射線と比較して僅少。単位摂取量当たりの実効線量を経口摂取の場合は、天然の放射性物質であるカリウム-40と比較して1/150程度である。 したがって、トリチウムは「安全」というのが、宮川さんの論拠となっているわけだ。 しかし、トリチウムについてはまったく逆の評価もある。ウェブ上の「原子力百科事典」に、「トリチウムの生物影響」という項目があり、 「有機結合型トリチウム(OBT)はトリチウムとは異なった挙動をとることが知られている。動物実験で造血組織を中心に障害を生ずることが明らかにされ、ヒトが長期間摂取した重大事故も発生している。」 と指摘している。 これを、宮川さん、また滝澤氏がどのように考えているのか聞きたいところだ。 滝澤氏の論文にはまた、「再処理工場の操業により「寄与」する放射線量は、安全審査で施設周辺の住民が1年間に受ける線量は0.022mSvと評価されている。これは、自然放射線の1/100程度の線量であり、実質的なリスクはほとんど考慮する必要がない」などと原燃の主張をそのまま書き写したような記述すらある。 論文の最後を、「しかし、この線量増加を過小評価しないよう、さまざまな条件をもとに念には念を入れて評価する必要がある」と逃げているが、ほとんどが原燃の主張をなぞっているだけだ。 この元国立水俣病総合研究センター所長とは、どういう人物なんだろうか。論文を読むかぎりでは、あまり信用できそうにない人物に思えるが・・・。 再処理推進派の主張とその論拠の二点目は、セラフィールド周辺の白血病の増加について。 宮川部長については、宮古の説明会でも白血病と放射能の因果関係を否定していたこともあって記憶に残っていた人物であるが、その論拠としているのが、イギリス政府が組織したCOMARE(Committee on Medical Aspects of Radiation in the Environment)報告であることがわかった。 一番新しい報告が2005年6月の第10報。これを読むのはうんざりなので、ざっと目を通してみると、結論が、 Because of this, it is not possible to conclude that living near the site at Rosyth confers a genuinely higher risk of leukaemia and NHL. It is clearly of importance to establish the reasons for the differences between the two sets of results: therefore COMARE is encouraging the research workers concerned to undertake a detailed comparison of the data and mthodologies used – see Recommendation 2, Chapter 5. これを読む限りでは、調査方法がまだまだ発展途上という印象を受けるが、どうなのだろうか。 宮川さんは、このCOMAREのこれまでの報告をもとに、白血病の増加そのものをも否定している。 COMAREという組織と報告が、どのように評価されているのだろうか。これに詳しい方たちに問い合わせているところである。報告を待つことにしよう。 これを書いている時に、滝澤氏について調べてもらっていた知人からメールが届いた。 「信用できないぞ。オレは、つきあいが無い」 とのことである。やっぱりね。
by sophia_forest
| 2006-04-16 06:53
| 原発
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