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2006年 03月 22日
前日、盛岡での「三陸の海を放射能から守る岩手の会」の例会に参加。この日は、「岩手の会」の会員の車に同乗して六ヶ所村を訪れた。青森へ足を踏み入れるのは、実は初めてである。高速を八戸で下りて、太平洋沿いの国道338号線を北上、おいらせ町、三沢市を通って10時過ぎに六ヶ所村に入る。
牧畜が盛んなのだろうか、広大な牧草地が続いている。沼沢地では、渡り鳥が飛び交っている。太平洋から遡上する魚たちも多いはずだ。生命あふれ、自然の恵み豊かな土地という印象を受けた。 沼地を過ぎると、突然、目の前に再処理工場が現われた。二重、三重に鉄条網がめぐらされている。テロ対策なのだろうが、物々しい雰囲気である。 今回の訪問は、六ヶ所村議会でアクティブ試験の安全協定をめぐる全員協議会が開かれ、協定締結への動きが加速されることから、少なくとも原燃が岩手・宮城で説明会を開催し、両県民の納得を得るまで、協定を結ばないことを村長に要望するためのもの。ただし、今回は村長との都合が会わないため助役へ要望書を手渡す予定だ。 この要望に参加したのは、「三陸の海を放射能から守る岩手の会」(盛岡)から4名、「豊かな三陸の海を守る会」(宮古)から1名、そして「三陸の海を守る気仙沼・本吉の会」から私の、3団体6名。 六ヶ所からは、長年村で反対活動をされている2名の方に案内役として同行していただいた。 11時に村役場を訪れ、今回の予約の確認。次に議会事務局に各議員への要望書を提出し、マスコミ各社との取材打ち合わせ。 その後、核燃関連で建てた「箱モノ」(施設)が集中する区域を訪れ、その中にある図書館で地方紙の情報収集。 ここで面白いものを発見した。新聞が閲覧できる休憩所の前の棚に原子力関係の本が並べられており、その中段に、広河隆一さんの『写真記録・チェルノブイリ消えた458の村』が、表紙を向けて、誰もが目につくように置いてあった。 これには驚いたが、なにやら村人たちの心や本音を代弁しているようだ。 昼食をとりながら、現地の人たちを情報交換を行ない、その後に再び役所を訪れて、1時に戸田衛助役に面会し、要望書を手渡すことができた。 実は、今回の役場での要望活動はこれで終わる予定だったのだが、議会の全員協議会の傍聴が許可されたことから、そのまま役場に残り、協議会の模様を目の前で見るという願ってもない機会にめぐまれた。 しかし、この協議会の内容はといえば、地区説明会で出された村民からの質問や要望などについて担当課長が説明し、議員たちが安全協定の早期締結を求める意見を述べて2時間もしないうちに終了という形式的なもの。 反対派の議員から、再処理工場の不備を指摘する意見もあったが、大勢は推進派の意見で押しきられてしまった。 協議会の後で、反対派の議員から内幕を聞くことができたが、議員20名のうち、表立って反対の立場をとるのは彼一人。残りは、議長も含め推進派とのこと。これではどうしようもない。 それでも、再処理工場の稼動によって放出される放射能に不安を感じている「慎重派」の議員も少なからずいるのだが、原燃の事業に依存する会社の経営者であったり、家族が原燃や関連会社に勤めていることもあって、批判めいたことを口に出すことはできない状況のようだ。 推進派の議員の話しを聞いても、「再処理」政策についての信念があるわけでもなく、原燃も国も安全だといっているのだから安全だ、という理屈にもならない理屈にすがりついているだけ。 おそらく本音では、再処理に相当に不安を感じているだろう。図書館に棚に『写真記録・チェルノブイリ消えた458の村』が置かれていたが、これに六ヶ所村の将来を重ねている人も少なくないかもしれない。 役場内の情報では、再処理工場の本格稼動により、原燃から20億円という固定資産税が毎年村に入ることになっているそうだ。村も、それを当てにして予算、つまり公共事業費を組んでおり、議会の大半は土建屋議員だから、「再処理」をしてもらわなれば困るわけだ。 つまりは、再処理でもなんでもいいから公共事業を持ってきて、とにかく「カネ」を地元に落とせ、というのが議員さんたちの本音だろうね。正直にそういえばいいものを、再処理はドウタラコウタラと、聞きかじりの理屈をこねて、かえって事を複雑にしている。 そういえば、青森の原子力行政を取り仕切り、傲慢さで知られる蝦名武副知事が、こんな本音をもらしている。「数兆円の賠償金を払えば、再処理工場をやめても構わない」 (『デーリー東北』「揺れる再処理-核燃料サイクルの行方」より) 原子力を人質にとって、とにかく国や電力会社からカネをむしりとってやる。おれは青森県のためにやってるんだ、と本気で思っているのかもしれない、この人物は。 「利権」と「タカリ」を行政手腕と勘違いし、それを生き甲斐とする人物は、田中角栄の亡霊のごとく、今もなおこの国に大きな陰を落としている。そんな蝦名「利権」副知事が、県政の中枢にふんぞり返っていること自体が青森県の最大の悲劇といえるだろう。 聞くところによると、この蝦名さん、おれはブッシュに似ているといっているらしい。よりによって、ブッシュを持ち出すとはね。まあ、ロクでもないところが似ていることだけは自覚しているようだ。 それはともかく、協議会終了後の午後4時に、六ヶ所と三沢の再処理反対グループが古川健治村長に同様の要請書を手渡すというので、許可をもらい、同席することになった。 古川村長には初めてお会いしたが、物事の道理をわきまえた人物とお見受けした。それも当然で、前は村の教育長。校長も勤められ、特殊教育にも関わっていたという。 六ヶ所村では、公共事業をめぐる利権スキャンダルが発覚し、果ては前の橋本村長が不可解な自殺を遂げて真相が解明されないまま幕引きとなっている。 そして、こうした村の事態に、「村の正義は薄れ、人のぬくもりさえ消えようとしている。誠実な心で村民の先頭に立ちたい」と立候補したのが、古川村長だったのだ。 (『デーリー東北』「衝撃からの再出発―迫る六ヶ所村長選」) しかし、教育者・古川健治でさえ、村長という立場についた時には、「再処理」を推進する側となる。これは何も六ヶ所に限ったことではない。それがこの国の「姿」なのである。われわれが本当に相手にしなければならないのは、「再処理」ではなく、この国のこの「姿」であることを忘れてはならないだろう。 (注:写真は「岩手の会」の大信田さんからご提供いただきました。)
by sophia_forest
| 2006-03-22 15:00
| 原発
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