ライフログ
最新の記事
記事ランキング
以前の記事
リンク
ブログパーツ
その他のジャンル
|
2016年 08月 22日
矢部宏冶 『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』(集英社 2016) (「はじめに」から) 日本の超エリートも知らない「日米密約」の闇 (p.2) おそらくみなさんもそうだと思いますが、私も長いあいだ、こう思っていました。 たしかに日米間の軍事上の取り決めには、オモテに出ない闇の部分もあるのだろう。でも、外務省など国家の中枢にはそういう問題を全部わかっているほんとうのエリートたちがいて、国家の方針をまちがわないよう、アメリカとギリギリの交渉をしてくれているのだろうと。 ところがまったくそうではなかったのです。 現在の日本のエスタブリッシュメントたち(私のいう「安保村」のエリートたち)は、戦後アメリカとのあいだでむすんできたさまざまな事実上の密約を、歴史的に正しく検証することがまったくできなくなっている。というのも、過去半世紀にわたって外務省は、そうした密約に関して体系的に保管・分析・継承することをせず、特定のポストにいるごく少数の人間の個人的なテクニックに、その対応をまかせてきてしまったからです。 そのため、とくに2001年以降の外務省は、「日米密約」という国家的な大問題について、ただ資料を破棄して隠蔽するしかないという、まさに末期的な状況になっているのです。 「戦争になったら、日本軍は米軍の指揮下に入る」という密約がある (p.3) 私はこの問題を調べはじめてから、まだそれほど時間がたっていないのですが、沖縄の米軍事基地の写真集をつくったことがきっかけで。沖縄問題の研究者のみなさんから、数々のおどろくべき事実を教えてもらうようになりました。(その多くは「条文」や「公文書」ですから、議論の余地のない事実です)。 この「日米密約」の世界に一歩でも足を踏み入れてしまうと、世のなかの出来事をみる目が、すっかり変わってしまうことになるのです。 たとえば、昨年(2015年)大きな社会問題になった、安保関連法についてです。あのとき国会では、安倍内閣が提出した法案をめぐって、普通の市民にはだれひとりフォローできないような複雑で錯綜した議論が、約4ヵ月にわたっておこなわれました。 その代表的なひとつが、 「それは個別的自衛権だ」 「いや、集団的自衛権だ」 という国際法をめぐる、よくわからない議論だったと思います。 けれどもすでにアメリカの公文書で確認されているひとつの密約の存在を知れば、あのとき起きていた出来事の本質は、あっけないほどかんたんに理解できるのです。 その密約の名は「統一指揮権密約」といいます。 これはかんたんにいうと、 「戦争になったら、日本軍は米軍の指揮下に入る」 という密約のことです。 1952年7月と1954年2月に当時の吉田首相が口頭でむすんだこの密約が、その後の自衛隊の創設から今回の安保関連法の成立までつながる、日米の軍事的一体化の法的根拠となっているのです。 けれども、これまでそれは、あくまで日本とその周辺だけの話だった。 ところが、今後はそこから地域的なしばりをはずして、戦争が必要と米軍司令部が判断したら、自衛隊は世界中どこでも米軍の指揮下に入って戦えるようにする。 そのために必要な「国内法の整備」が、昨年ついにおこなわれてしまった。それがあの安保関連法の本質だったということです。 日本の戦後史に残された「最後の秘密」とは? (p.5) 私は今回、この「戦争になったら自衛隊は米軍の指揮下に入る」という密約の行方を追いかけるうちに、おそらくこれが日本の戦後史における「最後の秘密」だろうと思われる、軍事面での「大きな構造」にたどりつくことができました。 これからそのことについて、できるだけわかりやすくご説明していくつもりですが、ひとつ先に申しあげておかなければならないのは、本書でこのあとその「最後の秘密」にまで話しが及んだとき、みなさんの目の前にあらわれるのは非常にきびしい日本の現実だということです。 なぜならそこでは日本の現状が、いままで私が本にかいてきたような、 「占領体制の継続」 ではなく、それよりもさらに悪いものだということが、公文書によって完全に証明されてしまうからです。 しかし、そこでくじけることなく、どうか最後までこの本を読んでください。 そうすれば、これまで戦後最大のタブーとされてきた、この日米間の隠された軍事的構造について、 「ああ、これ以上の謎も闇も、もうないのだな」 という境地にたどりつくことが、きっとできるはずです。 そしてかすかな安堵感とともに、小さな「希望の光」を感じることも、きっとできるはずです。問題の原因と構造さえはっきりわかれば、あとはその解決へむかう道を、ただあきらめず前に歩いていくしか、ほかに方法がないからです。 それでは、これからこの本を、できるだけわかりやすく書いてみることにします。 本書でご説明する「最後の秘密」、つまり日米間の隠された軍事的構造が、けっして一部の研究者が知っていればよいというものではなく、日本人のだれもが知っておくべき問題だと強く思っているからです。 #
by sophia_forest
| 2016-08-22 12:26
| 総合
|
ファン申請 |
||